築地を歩いて、魚をさばいて、コードを書いて。 水産業界活性化に挑む、エンジニアの日々。

CTO石井さん & エンジニア木村さん

「持ち運べる築地市場」というフレーズで話題の、飲食店向け鮮魚注文Webサービス「魚ポチ」を運営していたり、中目黒や武蔵小山に、めちゃくちゃお洒落な鮮魚店「sakana bacca」をオープンしたり。水産業界を盛り上げようとテクノロジーとクリエイティビティを注ぎこんでいる会社。それがフーディソン。

職人気質の強いイメージがある水産業界で、水産流通のあり方を革新する取り組みに各メディアも興味津々の様子。ちょっと検索するだけで、同社のサービス「魚ポチ」や「sakana bacca」を取り上げるニュースが目に飛び込んできます。「水産×IT」というちょっと変わった組み合わせが気になって、取材してきました!

もちろん築地市場は、オフィスのすぐそこ。

築地市場は、オフィスのすぐ近く。ち、近い!

おお、熱の入った打合せをなさっている…ん?右に、何か貼ってあるぞ。

稚内、釧路、八戸・・・聞いたことある地名と思ったら、全国の漁港地図でした。こんなにあるんですね。

デスクに何気なく置かれている資料も、めちゃくちゃ「水産業!」って感じです。

ははあ・・と驚いていると、いらっしゃいました! 今回取材に応じてくださる、CTOの石井さんと、エンジニアのキムラさんです!

って、PCに魚拓?

聞けば、漁師さんなどがトラックなどに貼る用につくられたシールなのだそう。 水産業界への熱い思いが感じられます・・・

ちなみにお2人は、mixiの第一線で活躍してくれていたおふたり。 元同僚としては、でっかい太鼓判をおさせていただけるレベルのスキルです。

しかしそんな彼らが、いったいぜんたい、なぜ「水産」という舞台を選んだのか。 フーディソンでどんな毎日を過ごしているのか…聞いてみました!

「ガソリン代も払えない」ほど疲弊しきった水産業界の現場。

まずは、フーディソンの成り立ちについて、教えていただけますか?

―石井

市場を経由する水産流通の市場規模は4兆円とも言われており、IT化も立ち後れていますし、課題に満ちているんです。

たとえば農業や畜産だと、既に業界構造を革新するようなプレイヤーさんがいますよね。でも水産は、そう簡単にはいかない。なぜなら、魚介類は鮮度劣化が非常に激しい。また水揚げがあるまで、どんな魚が、どれだけ収穫できるか読めないからなんです。ゆえに生産管理ができないため需給のブレが激しく、そこを考慮するシステムを作ろうとすると、一筋縄ではいきません。

確かに、購入して4日目の刺身には抵抗あるし、仮に年中新鮮なサンマが食べれるかというと難しそう。 それでもなお、その困難に立ち向かおうと考えられた理由は何ですか?

―石井

市場の危機感ですね。現在、全体の70%が、大手量販店・大手飲食店チェーン等で流通しています。彼らが一定の魚種・量を、低価格で買い叩くという構造になってしまっているので、現場の漁師さんの収入は刻々と下がり、ガソリン代も払えないほど辛い想いをされています。このままでは漁業に従事する方が少なくなり、業界全体が持続不可能になるのではないか、当たり前のように魚を食べられる世の中が消えてしまうのではないか…そういう想いが理由です。

現状は、規格外の魚は市場にすらあがらないそう。加えて、日本周辺でとれる魚は種類が多く、非常に味がよいにも関わらず、一定の漁獲量は見込めないこと、知名度が低いことで捨てられてしまう「雑魚」も沢山あるそう。こうした非効率を無くすこと。生産者と消費者にとって、最適な仕組みをつくること。持続可能な漁業活動をつくること・・・それを目指して、フーディソンは設立されました。

確かに聞けば聞く程、心配になりますし、もったいない。知れば知るほど、みなさんが使命感を刺激される気持ちがわかりはじめました。

“築地を持ち運べる”「魚ポチ」が爆誕。

―石井

まずは、大手量販店にかわる大きな需要を喚起する事が大切だと考えました。そこで生まれたのが「魚ポチ」というアイデアです。PCやスマートフォンで簡単に、築地市場に卸される水産物を注文できる飲食店向けのサービスで、2014年2月にリリースして、現在は1700店舗まで増えています。

魚ポチの公式サイト。「魚を仕入れに行く時間がなくて困っていた」「アジ一尾から注文できるから助かる」…特に、仕入れのみを担当する専任者がいない多くの小規模飲食店から、非常に高い評価がされているとか。

―木村

すごく衝撃的でしたね。本当に求められているもの、必要とされているものは、すぐにファンが増えていくものなんだと実感しました。昔、携わったサービスでは1000ユーザー獲得するのに、数年かかっていたりして、…それらと比較すると比べ物にならないスピードで「魚ポチ」利用者は伸びています。

ポチっとタップするだけで魚を仕入れることができる、仕入れを忘れていても、いつでもどこでもAM3時まで注文できる・・・そんな魚ポチを使えば、新しいメニュー開発にも時間を割けるし、珍しい魚種を料理してみて、お客さんを驚かせてやろう、そんなお店も増えそうですよね。

「魚ポチ」では、朝5、6時に生産地で行なわれた競りによる水揚げデータが、その日の昼頃にはアップされるそう。各飲食店はそれをみて、仕入れたい魚をタップするだけ。築地市場の仲卸業者さんと協力して生まれたこの仕組みは、非常にシンプルかつ革新的な流通ルートとして、少しずつ浸透しはじめています。

リアルに“おいしい!体験”をー「sakana bacca」も爆誕。

さらに「魚ポチ」を立ち上げたわずか数ヶ月後の2014年12月、フーディソンは鮮魚店「sakana bacca」武蔵小山店をオープンします。さらに勢いよく2015年2月に中目黒店もスタート!これまでの「魚屋さん」のイメージを大きく覆すスタイリッシュな店舗世界観も含め、sakana baccaはメディアでも大きく取り上げられています。

お店のコンセプトは「産地の美味しいを楽しく伝える」がコンセプトなのだそうですが、いったいどんなお店なんですか?

―石井

sakana baccaでは、ふつうのスーパーでは発見できないような美味しくて珍しい魚を販売しています。解体ショーを開催いたり、レシピをご紹介したり、美味しい魚介スープを無料で試食していただいたりしながら、感じた事のないような、感激に満ちた美味しい!を見つけてもらえるお店です。

黒ムツ、マゴチ、ヒラマサ…確かにスーパーではおめにかからないお魚ばかり!

この日もデザイナーさんが、こんな店舗向けのポスターを作っておられました。なんておいしそうな煮付け!!! 魚のお料理がしたくなります。おなかがすいてきます。

なんと、2015年4月には、sakana bacca中目黒店と福井県坂井市が共同のプロジェクトも開始。

おいしいのに鮮度維持や知名度の問題で首都圏に流通していないメバルや甘鯛などを詰めた「地方創生福袋」を企画発売、発売日はものすごい大盛況だったそうです!

上の写真はその時の様子。カメラの数もすごい!

―石井

このsakana baccaについては、キムタク(木村さん)がめちゃくちゃ活躍してくれていますね。

―木村

入社して2週間で、sakana baccaが魚を仕入れるシステム「店ポチ」を開発しました。もう、毎日のように何度も店舗に通いましたね。

この「店ポチ」の登場で、1時間半以上かかることもあった仕入れ業務を、30分以下に短縮することに成功したそう! 魚のスペシャリストである店舗スタッフの方とのチームプレイ、見事です。

―木村

「おいしい!」「楽しい!」体験を増やすこと。エンジニアにとっても、店舗スタッフにとっても目標は同じ。店舗で革新的な取り組み、面白いプロジェクトを続けていくには、店舗スタッフの本来のスキルを発揮できるような業務フローの効率化は不可欠。それに、店舗では消費者のニーズを多く収集することができますから、新しいサービスの種も見つけられるはず。まだまだやることは、たくさんあります。

歩いて、話して、さばいて、食べて、コードを書いて。

―木村

ちなみに、今日も午前中にお店へ顔を出して、「まごち」という魚を買って、自分でさばいて、刺身で食べてきたところです(笑)。

ええ!?さばく?

―木村

いや、本当に、信じられないくらいウマいんですよ。自炊もしなかった僕ですが、はじめてsakana baccaで新鮮な魚を食べたときの感動体験は、忘れられない。それを多くの人に伝えたいという気持ちも、エンジニアとしての原動力になっていますね。

―石井

そう、僕も魚、さばきますよ。入社した時は、魚の知識もまったくない、市場の仕組みもわからない状態でしたけれど(笑)。とにかく、何をすれば水産業界を盛り上げられるのか、その気づきがほしくて、朝の5時から築地市場に行って、いろんな人に声をかけて、どんな風に競りや水揚げ情報の流通がなされているのかをリサーチしました。

常に勉強の日々。実際に飲食店さんから注文を受けた品を、自分たちで市場で仕入れて、発泡スチロールでアジを詰める作業をしたこともあるそう。そんなことをしているうちに、さばくスキルまで身につくなんて!もはやエンジニアの仕事を、大幅にはみ出していますね(笑)。

―石井

そう。当事者意識、ではいけない。当事者にならなくては絶対に問題解決ができないと思っていますから。

そうして実際に食べたり歩いたり、いろんな人と話をしたり、魚の流通に触れたりすることで、次第にわかってくるんです、どういう情報があれば飲食店さんが注文しやすいかとか、どういう構造を持たせれば効率的に情報流通がなされるかという気づきが。それですぐに仮説をたてて、すぐ開発をはじめるんです。

魚ポチのリリースまで、わずか3ヶ月。「店ポチ」のリリースまでは、たった2週間。

歩いて、食べて、話して、さわって、課題に気づけば仮説をたてて、すぐにコードを書き始める。まさにリーン開発!

―木村

というか、リーン開発を目指しているわけじゃなく、やりたいこと、解決したいことに取り組んでいたら、おのずとリーン開発になるんですよね(笑)。水産業界は、まだまだ解決すべき課題に満ちていますから。

築地を歩けば課題にぶつかる。水産業界に求められる、エンジニアの力。

―石井

築地を歩けば、課題だらけ。未だにFAXがメインの通信ツールで、しかもそれが壊れていることさえある。アナログすぎて、改善したくて、今じゃそんな水産業界が愛おしくてたまりません(笑)。

―木村

本当にそうなんですよね。やりたいことが次々と出てくる。 そうだ、僕の自信作、見てもらえます?最近作ったんですけど、ラベル作成アプリ。

タップすると・・・

おお!ラベルが出てきました!木村さんは、もう、ものすごく嬉しそう。

―木村

困っていることを見つけたら、すぐに解決のために動くんです。そして、こんなの作りましたって持っていくと、ものすごく喜んでもらえる。エンジニアとしての自分自身の価値を、驚くほど実感できるんですよ。これまで長年エンジニアとして働いてきて、今、一番、社会に価値を提供できていることを実感しています。

お二人はさらに水産業界をアイデア&テクノロジーで盛り上げていくため「魚ッカソン(ギョッカソン)」なるイベントも開催。第一回目では漁師さんも招き、漁業に関するあらゆる話、課題などを話していただいたそう。

第一回の様子。漁師さん自ら、お刺身もふるまってくださったとか!これは盛り上がりそうです。

―石井

素晴らしいアイデアがたくさん生まれたので、もうすぐ第二回も開催予定です。水産業界に興味があるエンジニアやデザイナーが、前回以上に集まりそうで、僕らもすごく楽しみなんですよね。

エンジニアの方やデザイナーの方に、ぜひ感じてもらいたい。いかにみなさんのその技術力やセンスが、水産業界を、そして社会全体を、格段によくする大きな可能性を秘めているか、ということを。そう、石井さんと木村さんは、熱く語ってくださいました。

ちなみに、フーディソンという社名の由来は、「フード+エジソン」の造語!だそうです。

当面は、水産業界へエジソン的イノベーションをもたらすことがミッションですが、みなさんのまなざしは、食全体へと向いています。これからが本当に楽しみ!みなさん、お忙しいところ、本当にありがとうございました!

会社名 株式会社フーディソン
代表者 山本 徹(代表取締役CEO)
設立 2013年4月1日
所在地
104-0045
東京都中央区築地6-26-3 DO築地ビル9階
事業内容 水産物・加工品販売関連業務、飲食店運営
運営サービス 飲食店向け鮮魚注文サービス「魚ポチ」
鮮魚店「sakana bacca」
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