月刊 生業(なりわい) ―エッジな人のおシゴトスタイル大公開―

焦らない。そして、予想外の展開も楽しめる自分になりたい。

プロフィール
タナカ ミノル
3月13日生まれ。
デザイナー。株式会社ピクルス代表。
2000年からFlashを使ったサイトやゲームなど幅広くデザインやディレクションを手がける。動画を駆使したSO-NETの「ボビー・オロゴンのトーキングクイズ」などで話題に。その後も日産CUBEのブログパーツ「Driving Cube」や、リクルートの「グルメの拳ホットペッパー.jp」など数多くの話題作を世に送り出す。現在では無料ブログパーツ「くるくるパーツ」などのサービス運営も手がけている。
ピクルス:http://www.pickles.tv/works/
無料ブログパーツ「くるくるパーツ」:http://parts.kuru2jam.com/

今の仕事を生業にしようと思ったきっかけ

タナカミノルさん写真この業界に入ったのは30歳のときでした。一般的にみると後発組ですよね。前職は機械加工をしていて、その仕事がけっして嫌いではなかったんですが、ある時に「今の自分は子供の頃の自分に誇れるのだろうか?」って考えちゃったんですね(笑)。子供の頃って、男の子なら誰もがヒーローになりたいじゃないですか。もちろん、大人になってから自分がヒーローになれるとは思っていなかったけど、「一回きりの人生を思いっきり生きているか?」と、自問自答したら、答えは「NO」だった。そこで、思い切って会社を退職。でも、一念発起して辞めたものの、何をするというあてもなく半年間ぐらいは無為に過ごしていましたね(笑)。

大きな転機になったのは「Flash4」との出会い。でも、そこにたどり着くまでは紆余曲折がありました。
もともと映像好きでアニメオタクで(笑)、高校時代に8ミリ映画を撮っていたぐらいで。そんな素地があったので、大阪映像制作会社の面接も受けてみたのですが、あえなく不採用で玉砕。そりゃ30才で未経験な人なんて雇うわけがないですよね(笑)。
で、そんなとき、ネットをウロウロしていたときに出会ったのが「Flash4」。「これなら好きな映像も作れるじゃん!」と思ってマニュアル本を読むと、すぐに使えることもわかった。そこから独学で覚えたんですね。でも、時代的にも環境的にもまだ、大阪ではそんなに仕事がなくて上京し、一度はWeb制作会社に就職をしたのですが、会社が求める仕事と自分の仕事に対する意識に相違があって・・・いろいろな事情で、結局半年で辞めフリーで活動することになりました。
仕事のあてといえば、ネットで知り合った仲間との交流という人脈、あとはFind Job !に掲載されている制作会社へ売り込みに行ったりとか・・・あ、本来の使い方と違いますね(笑)。
そんなこんなで、ちょこちょこですが仕事の依頼が来るようになりました。そのとき、少し大きな案件をこなして、金銭的にも余裕ができて、一時趣味で劇団に所属なんかもしていたのですが、気づけば残高がヤバイ!となり、演劇活動はお休みして、怒涛のような仕事づけの日々を送り・・・現在に至るって感じですね。

シゴトに対するスタンス

タナカミノルさん写真最初にお伝えしましたが僕の場合は、デザイナーとしてのスタートがかなり遅い。他人と同じことをやっていても追いつかないので、心を病むぐらいに仕事をしましたよ(笑)。
ホント、「死」を身近に感じるぐらいに寝る間を惜しんで没頭しました。依頼を受けると、相手が求めているクオリティ以上のものを出すためにギリギリまで自分を追い詰めましたから。
ギリギリまでやるというのはどういうことかといえば、自分の能力を出し切るということなんです。以前はオーダーに対して120%のものを出してやろうと考えていました。
でも、最近は100%以上のものなんて出せないと気がついたんです。じゃあ、相手が求めている以上のものって何かというと95%から100%のものなんです。我々にオーダーする広告代理店の人たちもプロだから、ある程度出来上がってくるものが予想できる。その及第点が95%なんです。それ以下ならば「ありきたりだよね」という評価になってしまう。この5%の中でアイディアを考えたり、クオリティを高めるなど、ギリギリのところまでやる。すると「コレ、いいね」とか「面白い!」となるわけです。そんな自分との闘いがWebデザインやFlash制作だけでなく、モノ創りをする基本スタンスだと僕は考えています。
もちろん、諦めずにやるからスキルも向上するなど、自分にとっても大きな財産になったと思いますよ。ただ、誤解して欲しくないのは、自分を追い込むといっても、どこか遊び心を持っていないとダメだということ。実は表現する仕事って「すきま産業」なんですね。
今日び、いわゆる「Webデザイン」のアイディアって、結構出し尽くされて相当成熟してると思うんですよ。技術は日進月歩ですが、アイディア自体は何かの応用だったりするわけで。
僕はその合間を突きたいなと常に思っていて、手前味噌で申し訳ないんですが、結果「斬新な表現だ!」なんて評価いただいたりするんです。すき間を上手くみつけるには、遊び心は絶対に欠かせない要素だと実感しています。

未来のクリエーターたちへのメッセージ

まず、知って欲しいのは「チャンスはいっぱい転がっている」ということ。でも、ほとんどの人が目の前のチャンスに気づかない。そういう僕も「実はあのときがチャンスだったんだ」と振り返ってはじめて気づくことがよくあります。たとえば、ある人にコンペ案件で声をかけられたのをきっかけにお付き合いが始まったのですが、連続して何回か落ちてしまった。
普通なら、結果を出せないデザイナーは、次のコンペはないっていうのがほとんどだと思うんです。
でも、その人はずっと声をかけてくれた。たぶんいいモノを出そうと僕が食らいついていったからだと思うんですね。そのうちに結果も出るようになった。その頃はチャンスだなんて意識していなかったけど、死に物狂いでやったことが結果的にチャンスを広げたと思うんですね。だから、どんなときもチャンスなんですよ。
そしてもうひとつアドバイスするとしたら、「創る」という行為は「伝える」ということ。だから、日常でも伝える訓練をしてほしいですね。たとえば、誰かと会話していれば自分の意見を必ず言うこと。話を聞く場合でも、なんとなく「ふんふん」ではなく「なるほど」など肯定しているのか否定しているのかを相手にわかるように伝える。こうした伝えるという意志がすごく大切だと思っています。
「チャンスはどこにもある」と思うこと。そして「伝える」ことをもっと意識する。どちらも「自分の可能性を開く扉」だと僕は考えています。なかなか結果に結びつかないかもしれない、でも遠回りになろうが、きっと自分の身を助けることにつながるはずですから。

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