「本質を見極める」 freee流、ブレない組織の作り方。

freee株式会社 代表取締役 佐々木大輔さん

今回お邪魔させていただいたのは、「会計」という分野の常識を、大きく覆したイノベーティブ企業です。それは、freee株式会社。同社が提供するクラウド会計ソフト freee は、中小規模の事業主を煩わせていた「会計・経理業務」を自動化させることに成功。スモールビジネスを営む忙しい経営者たちは、「面倒でややこしいルーティン業務」から開放され、よりクリエイティブな業務へと時間を注げるようになりました。その驚くべき便利さに驚き、次々とSNSでfreeeの存在を仲間へと伝えてくれたユーザーの働きにより、見事爆発的なヒットを遂げたfreeeは、今や15万以上の事業所が利用するサービスへと成長しています。

2014年4月には、なんと8億円もの大型資金調達を果たしたというニュースも。ちなみに同社設立は2012年。たった2年ほどで社員数は70名超。ものすごいスピードで組織もサービスも成長しているfreee社。いったい社内では、日々、何が起きているのでしょうか?!

ドキドキしながらエレベーターを降りると、タブレットでお出迎え。
ロゴのツバメがなんとも可愛らしい。

社内に入ると、まるで南国〜!カフェみたいなオシャレ空間です。

お部屋に案内していただくと…ん?何か書いてある。

「コシアカ」?! 。

ちなみに、隣の部屋は「サンショク」って書いてありました。

あとで聞いてみたところ、「コシアカ」も「サンショク」も、freee社のロゴマークになっている「ツバメ」の種類名なのだそう。ちなみにツバメは「世界一速く飛ぶ鳥」として知られる鳥。「会計業務を高速化させる事業内容にふさわしい」とロゴデザインにあしらわれたそうですが、freee社自身の著しい成長速度にも、ぴったりです。

勢いよく大空を飛ぶツバメの姿を想像していると…いらっしゃいました、佐々木さん!freeeのロゴが入ったTシャツ&パーカーで登場です。

博報堂マーケティングプランナー、投資アナリスト、ベンチャー企業CFO、Googleマーケティング統括、そしてfreee起業という豊かなキャリアを歩んで来られた佐々木さん。やっぱり、設立当初から順風満帆だったのかと思いきや…案外、そうでもありませんでした。

「今の会計ソフトで充分」とバッサリ。

―佐々木

リリース前に市場の専門家にプロトタイプを見せたんですが、その反応は全然芳しくなかったんですよ。「今の会計ソフトで充分だし、むしろ新しいフローを覚えるほうが大変だしコストだよね」ってバッサリ言われちゃいました。

あれ?意外に冷たいマーケットの反応。
目の色を変えて驚いた、というリアクションを想像していました。

―佐々木

皆さん、「今の会計ソフトの改善版なら欲しい」と思っていても、誰も「まったく新しいもの」はイメージしていないし、期待もしていなかったわけです。しかもそれを持って来たのは、無名のベンチャー企業(笑)。なおさら「何コレ」って感じだったでしょうね。

なるほど…

―佐々木

でも、そんな言葉は気にせずに、予定通りリリースしました。私たちが作った「全自動」の会計ソフトを使えば、会計業務にかかる時間は1/50以下になるというテスト結果も手にしていましたし、強い確信があったんです。するとやはり、「こんなのを待っていた」と、爆発的な反応が返ってきました。一時はサーバが落ちてしまうほどでしたね。

業界の方々の「目の色が変わった」のはそれからですよ、と穏やかに笑う佐々木さん。普通なら、その否定的な反応にひるんでしまいそうですが…普通じゃないイノベーティブ企業freeeは、やっぱり違いました。

―佐々木

この経験から、「自分たちが信じるものを作る」ということに、集中するようになりました。たとえ「欲しくない」と言われてもね。

かっこいい…決してブレていません。

ユーザーからの提案は財産。でも鵜呑みにはしない。

―佐々木

「ユーザーの要望や意見をそのまま受け入れるのではなく、自分たちが信じる新しい道を見つけることのほうがずっと大切だ」という考え方は、今に至るまで非常に大切な価値基準になっています。だって、まったく新しいもの、新しいやり方が見えていて、それを期待している人って実は殆どいないんですから。

ふむふむ、なるほど…じゃあ例えば、ユーザーさんから「入力方法を、こう改善してほしい」と言われたら、その意見に対してどう応えていくのでしょうか?

―佐々木

当社なら、「入力そのものを無くすことのほうが、本質なのではないか?」と考えるでしょうね。

な、なるほどー!!!
まさに、これこそイノベーションーー!

ユーザーの期待を、いい意味で裏切ってみせるその考え方、スゴいです。

常に「本質的な問題は何か」を考える。

―佐々木

ユーザーの皆さんからいただくご意見は、なによりの財産です。距離も本当に近いですよ。チャットで「今日もお疲れさまです〜」なんて言い合ったりするくらい。大切なのは、沢山いただくご意見やご提案から、いかに本質的な問題点を見つけ出すかなんです。

えっ?

チャット?

―佐々木

そうです、チャットでユーザーの皆さんとやりとりすることは、私たちにとっては普通のこと。何気ないコミュニケーションから発展して、新しい提案をいただくこともありますよ。そうしていただく新しい視点から、いかに地道に考え、考察するかが大切です。また、私たちは毎月、ユーザーの皆さんや、製品の利用経験がない経営者の方にお越しいただいて、freeeの体験会を開いているのですが、別室で皆さんが操作している様子を注意深く観察していくと、沢山の発見があるんですよ。ユーザーの皆さん自身も気づいていないレベルの「指先の迷い」が見えてきたり、当社の意図とは異なる操作をされるユーザーさんがいらっしゃったり・・・そこからまた新たな問題点をあぶり出せるわけです。

へえ…レベル高い・・・。その上、freeeはBtoBサービスとは思えないくらいアップデートのスピードが早いですよね。

―佐々木

そうですね。小さな変化を恐れず、どんどんアウトプットすることが大切だと思っていますから。freeeでは毎日なにかしらのアップデートをしています。悪いフィードバックが来れば、また見直しをすればいい。そうするとね、ユーザーさんもそのスピードに慣れてくるんですよ。

70人超の組織で「人事担当」がいないワケ。

それにしても、そんな風に常に本質を見極め、スピードを維持し続けられる人材を探すのは、難しいのではないですか?

―佐々木

そんなに難しいと思ったことはありません。ちなみに当社では、人事担当がいないんです。共に働く仲間を見つけるためには、上長が直接その方に対して、チームのミッションや目的を語りかけるべきだと思っていますから・・・エンジニアは僕が自ら面接して採用していますし、バックオフィスは担当取締役が採用活動をしています。

ええー!70人を超える組織でありながら人事担当を置かず、共に働く仲間探しのプロセスを経営陣が「直接」担うなんて。仲間とのビジョンや目的意識の共有を大切に考えているからこそ、です。

にしても、この規模で人事担当を置かないなんて、やっぱりすごく珍しい…

―佐々木

そうかもしれませんね。でも実際、すごく素敵な仲間が集まってくれていますよ。経歴や個性も様々。私のブログでも紹介していますが、当社のマーケティング部門で活躍してくれているユキナオは元フリーターですし、司法試験に挑戦し続けていた東大法学部卒の31歳プログラマもいます。あとは公認会計士の資格を持つカスタマーサポートもいますね。

入社前は警備員のバイトをしながら、プライベートでは自分でWebサービス運営もしていたというユキナオさん。必要とあらば、気合いで大量の英語文献をも読みこなす、社内きってのムードメーカー

東大法学部卒の31歳プログラマ。入社時点では開発経験は一切なかったのに、半年で見事なコードを書く一人前のプログラマになったという「伝説の男」です。

「専門知識を新たな分野へ応用したいと考えたら、freeeにたどり着きました」と面接を受けに来た彼は、公認会計士試験合格者。カスタマーサポート分野で大活躍中なのだそうです。

―佐々木

いろんな人がいますが、共通しているのは「新しいことに挑戦することに対して、まったく躊躇しない」という点。「やったことがないからムリ」という人は、ひとりもいませんね。皆、「新しい自分に出会う」毎日を、とても楽しんでいるようです。

「上流工程」という言葉、あんまり好きじゃないですね。

そんな挑戦心旺盛なfreeeメンバーの中には、業務の垣根もないようです。プログラマが躊躇なくカスタマーサポート業務をこなすこともあれば、カスタマーサポートスタッフが新規開発プロジェクトの種を作ることもあるとか。

―佐々木

「上流」と「下流」という概念も、ウチではあまり使いません。当社では「ディレクター」という職種もいないんですね。自分で提案して決めたものを、責任持って最後まで作る。そういう文化だからこそ仕事が面白いし、「待ち」がないからスピード感もある。

なるほど。全員がイノベーションを起こすために問題意識を持ち、問題を見つけたら即、解決に向けて行動する・・・そんなシンプルな仕組みが、freeeのスピード感、一体感を生み出しているんですね。

―佐々木

「このムダを、この重複作業を、エンジニアリングで、どうやったら無くせるだろうか?」という問題意識、合理化欲求に突き動かされて開発に入りますから、エンジニアにとっても、すごく楽しいと思いますよ。

オフっぽく、オンになる。自由で自主的な空間。

しかしほんと、みなさん楽しそうにというか、くつろいで仕事をされていますね。家みたい。

ゆったりソファでくつろぎながら開発中のエンジニアさん。いいなあ!

ここはまるでカフェみたい。なんだか、すごく自由な空間です。

―佐々木

そうですね。家でもオフィスでもなく、オンでもオフでもなく。「くつろぎながら、やりたいことに取り組める場所」を理想として作りました。ですからゴザのうえでねっころがって仕事するもよし、ソファでくつろぎながらアイデアを練るもよし。ちょっと気分転換が必要だと思えば、自由にやればいいんです。ここはそういう空間ですね。

カフェみたいだしダーツもあるし・・・リラックスできるための空間を工夫され設計されています。

こんなサーキット場までありますし・・・

走っています、走っています・・・!

卓球で気分転換中の方もいらっしゃいました。 なかなか本気・・・

卓球は人気で、オリジナルラケットまで作っちゃったそうです。

ちなみにこの卓球もダーツも自動車模型のサーキットも、すべてスタッフの皆さんが自発的に購入を提案し、導入されたものなのだそう。シゴトにおいても、働く環境においても、なにもかも「自分発信」。この主体性に満ちた人間集団だからこそ、イノベーションを起こせるのだろうなと改めて思いました。

―佐々木

そうそう、今僕も着ていますが、当社のロゴTシャツやパーカーも、フリーで提供しているんです。卓球で汗ばんだらすぐ着替えられる環境なんですよ(笑)。お客様にもお渡ししているので、よかったらどうぞ!

ええええええ!うれしい!ありがとうございます!

遠慮なく、いただいてしまいました!ヤッホー!

カラーもたくさん。なんとキッズ用もありました。

と、その時、なんだか美味しそうなニオイが・・・

テーブルに人が集まってきています・・・

か、角煮〜!!!ノリ〜!おいしそう!

そのとき、ゴハンが炊きあがった音が!!!! 
おかずを持ち寄って、みんなで炊きたてゴハンを食べる・・・もうホント、自由ですね。

―佐々木

みんな本当に、自由にくつろいでいますよ。もちろんしっかりと自分自身で、メリハリをつけながらね。オフっぽくオンになる…それがウチらしさかもしれません。

freeeが考える、次の未来。

自由な環境をしっかりと謳歌しながら、決してブレることなくイノベーションを続けるチーム・freee。皆さんのまなざしは今、どんな未来を見ているのでしょうか。

―佐々木

中小企業のクラウドサービスの利用率は、ここ1年で大きく伸びました。それに、これまでは注目されていなかったスモールビジネス向けのサービスが、数々生まれていますね。それは本当に素晴らしいこと。そうした中で誕生した「Square」や「BASE」といった主なサービスとは連携済みですし、外部パートナーが自由に開発できるようAPIもオープンにしています。

考え方がめちゃくちゃオープン・・・! これまでのBtoB向けソフトは、顧客を囲い込むためにあらゆる施策を講じていました。freeeはまさに、正反対です。

―佐々木

とはいえ、まだ埋まっていない隙間もあります。まずはそれを埋めて、一気通貫のサービスにすること。そしてfreeeを使うユーザー同士のネットワークを作ること。その後は海外市場への進出も視野に入れています。

たった数年で、会計ソフトの常識を変えてみせたfreee。質を追究することで、イノベーションにつなげていく。ブレない組織作りに励むfreeeのこれからが楽しみです。

会社名 freee 株式会社
代表者 佐々木大輔(代表取締役)
設立 2012年7月
所在地
141-0031
東京都品川区西五反田1-18-9 五反田NTビル7F
事業内容 「クラウド会計ソフト freee」「クラウド給与計算ソフト freee」の運営
運営サービス クラウド会計ソフト freee
クラウド給与計算ソフト freee