「Willがない時はCanを伸ばせ」元営業&ゼクシィ編集長、未経験で人材開発部長になった開大輔さんのキャリア論

株式会社やる気スイッチグループ
人材開発部 人材開発部長 開 大輔さん

個別指導学習塾の「スクールIE」や英会話「WinBe」、知育と受験対策の幼児教室「チャイルド・アイズ」などを手がける株式会社やる気スイッチグループ。「やる気スイッチ、君のはどこにあるんだろう〜」あの印象的なCMを思い出す人も多いかもしれませんね。

今回インタビューしたのは、人事未経験ながら組織風土改革というミッションを任され、2018年に入社した経営管理本部 人材開発部部長の開(ひらき)大輔さん。新卒でリクルートに入社し、教育系事業の営業職を経験したのち同社が発行する結婚情報誌『ゼクシィ』編集部に異動し編集長まで登りつめ、キュレーションサイトを運営するITベンチャーに転職しコンテンツ部門を統括する取締役CCOへ。その後、やる気スイッチグループに入社して人材開発部長になりました。

異色とも言える経歴をお持ちですが、どのような指針でキャリアを積まれてきたのか、個人のキャリア遍歴に加え、人事経験のない人材開発部長として、今後IPOを目指す同社にてどのような組織変革に挑むのかなど伺いました。

20代は明確な「やりたいこと」なしも、チャレンジを選択の連続

新卒でリクルートに入社された理由から、やる気スイッチグループに入社して人材開発部長になるまでの経緯について、順を追って教えてください。

新卒でリクルートに入社したのですが、大学生の時はとにかく貧乏だったから「稼げる人になりたい」っていう一心でした。

学生時代に苦労されたんですね…。

そうですね。色々あって家賃も学費も払わなくてはならないような状況だったので、とにかくお金を稼ぎたかったんですよ。リクルートは若いうちから高い給料がもらえる、でも死ぬほど働くというのを聞いていたので、そういう環境で頑張ったほうが鍛えられて、後々活かせるスキルが身に付くんじゃないかなと思って。当時は明確に「何かやりたい」というのがあったわけでもなく、「なんでもやります!頑張ります!」って感じで入りました。

入社時は、どのようなお仕事をしていたんですか?

進学事業部っていう大学とか専門学校など教育機関の募集広報のお手伝いをする部門があって、そこで営業担当をしていました。進学事業部の営業は年に一度、大商いのシーズンがあって、それ以外の時は比較的穏やかな時間が流れていました。もちろん、大商いを失敗しないために1年かけて接待を含めたリレーション作りはしっかりやります。

それがうまく出来るようになるにつれて、成績も上がってトップ営業マンにもなれたんですけど、「俺、本当にビジネスマンとして成長しているのかな?」ってだんだんとモヤモヤを感じるようになって。

ビジネス環境としては特殊だったので、このまま今の部署で営業を続けて30歳になった時、違う領域でも自分のスキルは通用するのかなと思い始めたんですよね。

『ゼクシィ』へはご自身の希望で異動したんですか?

はい。社内でフリーエージェントのような制度があったので、それを利用しました。当時の『ゼクシィ』は事業の伸び盛りで、とにかく人が欲しい状況だし、みんなとても忙しそうで。マーケットとしても伸びているということで興味を持って面接に行ってみたら「すぐおいで」ということで異動しました。それが入社して4年半経ったタイミングです。

『ゼクシィ』でも、最初は営業職だったんですね。

そうです。異動したら想像通りものすごく忙しかったんですけど、ちゃんと今まで営業で大事にしてきたことをやれば、別の業界でも売れるというのがわかって、1年くらいは新しい環境で成長実感もあって、楽しくやっていました。

教育系の時と業界が違ってもスキルが通じた、と。

その後、新しくブライダルエステのマーケットを開拓するプロジェクトのメンバーに呼ばれました。当時の『ゼクシィ』には読者保護の観点でブライダルエステ情報の掲載がほぼなかったので、改めてクライアントの掲載基準や表記ルールを作るとか、クライアントとユーザーのセグメントをマッチングさせる仕組みの裏側を学ぶとか、色々なことを経験してそこで初めてマーケットを作る面白さを感じましたね。

営業から編集へは、どのような経緯で職種転換したんでしょうか?

ブライダルエステの取り組みを通じて、ユーザーとクライアントの潜在的なニーズを拾ってきて、情報を通じてマッチングさせるとマーケットが伸びる、というのを学び、その話を当時の『ゼクシィ』編集長にしたら面白がってくれて。そこで「編集部に来ないか?」って話が出てきて、営業への飽きも少し感じていたので職種チェンジしました。

営業に飽きたというのは、具体的にどう飽きていたのでしょうか?

ある程度活躍できる営業にはなれたんですけど、その当時の自分が見える営業としての限界はここら辺だなっていうのが分かったというか。このまま何年か経ったらマネージャーにはなれるかもしれないけど、伝説の営業マンとかにはならないだろうな、と。リクルートって、すごい人がたくさんいるんですよ。そういう営業マンになるのは僕には無理だなと思って。

一方で、自分はただ商品を売るだけじゃなくて、どうしたらきちんと読者にも喜んでもらえて、結果的にクライアントの効果にも繋がるか、みたいなことを考える志向性は強いなと感じていました、それで、それを活かせる仕事をした方が、成果が出せるんじゃないかと思ったんです。

ちょうどいいタイミングだったんですね!

やったことがないので不安はありましたが、飛び込んでみて良かったですね。『ゼクシィ』に異動したのもそうだし、編集の仕事をしたのもそうだし。僕の場合は、結果的に居心地の良い場所を出てチャレンジする、というのをなんとなく選択し続けてきたのはありますね。

営業経験を活かした編集者を軸とした30代と、40歳での転職

編集の仕事を始めてみてどうでしたか?

この時が一番大変でしたね。30歳になる手前での異動だったんですけど、そのまま営業だったらマネージャーになれそうだったのに、編集になった途端、年下の女の子たちにもかなわないペーペーになるわけですよ。

確かに…それはつらいですね。

ただ、かわいいタイトル案が出せなかったり上手なラフは描けなくても、どんなラインナップで記事を入れた方が本全体で読者に受けるかとか、ユーザーインタビューの結果からどういうコンセプトを作ればいいのかとか、メディアをどう設計すればいいかっていうのは編集オンリーで来た人より、ビジネス感覚がある人の方が得意だったりする。だから営業を経験していた自分の場合、そういうことは他の人よりちょっと得意だったんですよね。

営業時代の経験がここに活かせたわけですね!

そうですね。そして、ある程度編集スキルも身に付いてくると、クライアントのこともわかり、マーケティングのこともわかる編集者っていうハイブリッドな存在になるんですよね。結果的に、その後は編集や企画を統合した部門でどんどんポジションが上がっていって、気が付けば編集長まで行きましたという感じです。

そのあと転職されたのはどういう経緯ですか?

『ゼクシィ』の編集長をやった後も、リアル店舗で結婚式場紹介をやっている子会社の経営企画や事業責任者や店舗開発までやらせてもらったりして、ここでもまた今までにない経験を積めていたんですが、その後にもう一回編集部に戻るタイミングがあったんです。この時はアプリを立ち上げるという重要なミッションがあったんですけど、それ以外の業務は前やったことと基本的には同じだったので「正直わくわくしない」って思ったんですよ。

やったことがあること、同じようなことには飽きを感じるんですかね。

飽きもそうですし、成長実感が得にくくなるんだと思います。その時にそろそろリクルートを出るタイミングだなと思って、自分を実験台として転職活動してみたんです。40歳という年で自分のようなキャリアの人間がフラットに転職活動したらどうなるのだろう?って思ったんですよね。

確かに40歳でフラットな転職活動したらどうなるか気になります。

企業規模も大小さまざまで、職種もさまざまなオファーがありましたが、当時オウンドメディアとかキュレーションメディアとかが流行っていた時代だったので、紹介会社からくる案件もメディア責任者系が多かったです。でも、ほとんどの会社がただ上手にPVを集めてマネタイズすることだけを考えていて、もともとメディアの世界にいた自分からすると「コンテンツ作りをなめんなよ」という気分でした。

その中で出会ったのが、株式会社マクロミル*創業者でキュレーションアプリ「antenna*(アンテナ)」(※以下「antenna*」と記載)を手がける杉本哲哉さんでした。

※株式会社マクロミル…2000年設立。インターネットリサーチ事業やコンサルティング事業などを手掛け、2004年東証マザーズへ上場。(翌年に東証一部へ市場変更)

すごい方にお会いしたんですね…!

「antenna*」は、雑誌を中心とするメディアの優良なコンテンツを、いかに美しい形でスマホ上で再現するかということに力を入れている、と彼が語っていてそこにコンテンツ制作者へのリスペクトを感じました。一方で、個人的にはアプリそのものはまだ面白くできる余地を感じたので、「このアプリをもっと面白くする」「優良なコンテンツをスマホで広げたい」と思ったのと、経営者として有名な杉本さんの近くで仕事をしてみたいという気持ちで飛び込みました。

そういう経緯だったんですね。

「antenna*」ではキュレーションの質にこだわって、色々工夫しました。ただ身も蓋もないことを言うと、現状のデジタルメディアのPVってコンテンツの本質的な良し悪しよりも、デリバリーの手法やSEO対策や下世話なタイトルで稼げてしまう世界じゃないですか。

「antenna*」がメディアのコンテンツを大事にしているスタンスはパブリッシャーから支持いただいていて、広告主もそのポリシーに共感してくれて、質のいい顧客と優良なメディアを繋ぐということは実現出来ていたけど、ビジネスとしては期待していたほどには大きくスケールしなくて。

ベンチャー企業の経営陣として、自分の管轄している部門だけでなく、会社全体としてどういう事業に育てていくかを毎回議論しつつ、でもなかなかクリアな答えが出ないまま試行錯誤を繰り返していました。ベンチャーはスピード感があって、常に環境変化の荒波に揉まれてるので、それが面白いんですけど、一方で地に足つけてじっくり時間をかけて取り組むのも難しいということは改めて感じました。

ベンチャーの大変さも痛感された、と。

事業の可能性に惹かれ、事業経験・経営者視点のある人材開発部長に

今後の「antenna*」のあり方を議論していく頃、自分に子供が生まれることになりました。その時に、生まれてくる子どものためにも20年・30年後の日本がもっとより良い社会になるような仕事をしたいと思いました。その時点でやる気スイッチグループのことは全然知らなかったんですけど、幼児教育に興味が出たのでとりあえず話だけでもと聞きに行ったら、めちゃくちゃ面白いし、伸びしろの大きい会社だと知りました。

どんな部分に面白さを感じたんですか?

単に受験のためのテクニックや知識を教え込むのではなく、子どもたち一人ひとりが持っている才能や能力という宝石をどう輝かせるかという理念と、それを実現するためのメソッドがしっかりあることですね。英語と知育と運動をコアにして教えているバイリンガル幼児園の「Kids Duo International」も見学したんですが、卒業時には英検三級くらいの英語力で、平均IQが144になって、運動能力も小学校入学時点で小学3年生くらいのレベルで走れるようになっているのを見て、心底驚きました。

すごい!知識も運動能力も、大人顔負けですね。

「こういう子どもたちが大人になった時、日本は変わるんじゃないか」と本気で思ったんです。でもその時点でこの幼児園はまだ4つしかなくて。これ日本全国に100園くらいあってもいいのにと思って話を聞いていくうちに、会社として事業拡大のスピードを上げるために必要な人材が足りてないと感じました。

もともとはプロモーションやマーケティング領域を担当する想定でお会いしていましたが、僕が「採用もマーケティングだと思う」みたいなことを話したことを社長が覚えていて、最終的に「人事やりませんか?」って話になりました。

人事未経験ですが、不安などはなかったんですか?

もちろんコアのスキルは人事ではないので、特に労務などの詳細はわかりませんが、リクルートにいた時も前職のベンチャー企業でも、常に採用をして組織を作ってメンバーを育てることはやってきたので、採用に関してそれほど不安はなかったです。

入社前は、やる気スイッチグループの色々な部門を自分で直接担当してみたいという思いがあったのですが、自分が一つずつ取り組むよりも、その部門ごとにスキルや知見のある人を連れてくれば、同時進行で改革が進むよなと思って。だとすると自分自身が責任者として有能な人材を採用していくことが、この会社に貢献できることだと思いました。

目的達成を早めるために自分一人ではなく、一緒にやってくれる人を連れてくる、っていうのは確かにいい考えですね。入ってからはどのような業務をしているんですか?

部署としては採用、教育研修がメインですが、概念的にはタレントマネジメントと企業文化や組織風土を作る役割を担っています。社員一人ひとりが機嫌よく活き活きと活躍できるように、どんな人に入社してもらって、どう成長して、どんなポジションに就いてもらって、その一方で退職する人を減らすためにはどんなルールや仕組みを作ろうか、というのを実践中です。

スキルは後からついてくる。理念と行動指針に共感する人こそ採用すべき人

開さんが入社して人材開発部長になってから、採用人数なども増えたんでしょうか?

退職者も減っているので、採用人数自体は増えていません。ただ採用の質にはこだわっています。この1年間は今まで社内にいないタイプでも、中長期的に成長が見込める人を戦略的に採用しています。新卒採用も今までから基準を変更して、将来のやる気スイッチグループを支える経営人材をターゲットにしました。

今までにいないタイプというのはどういうタイプですか?

例えば何か一つのやり方を変えようとしても、関わる人の考え方を変えるのは、ものすごい大変じゃないですか。手間も時間もかかるし。でも「そういう環境を変える方が楽しい」っていう前向きな人を採用しています。周りが整った環境で働く方がパフォーマンスが出る人もいれば、「そういう歯車のような役割はつまらないから自分で環境を変えていきたい」という人もいると思うんですが、今は後者を戦略的に採っていますね。

なるほど。

あとはスキルよりも、本当にこの会社が大好きでこの会社を伸ばしていきたいという気持ちのある人ですね。「一人ひとりの宝石を見つけて輝かせる」という企業理念に共感している人。これは絶対見ています。もうひとつ、第二創業のタイミングで、社員に求める行動指針は「オープン」「ポジティブ」「オーナーシップ」という三項目を掲げているんですけど、これを持っている人ですね。

この3つがあるのにダメな人って見たことがない。極論、スキルは後でもついてくるから、スキルや経験だけではなく、理念への共感や人間としてのスタンスを大事にしようと、経営陣と一緒に決めました。

一つの領域で突き抜けるよりも、他業界でそれまでのスキルを生かすのもあり

これまで様々な職種と業界を経験された開さんですが、キャリアを転換する際の決め手はどんなところにあるんでしょうか?

今にして思えば、乗らなかったお誘いもあるんですよ。というのも、いま目の前が辛いからとか、そういう逃げる感じの選択になることは選ばないようにしてきました。今やっていることに対してそれなりに自分の中でやりきった感じがあって、その時に次のチャンスがあれば乗ったという感じです。

営業と編集ができたからハイブリッドな存在になれたようなキャリアってこの先もあると思っていて、教育とブライダルとITとかの領域の掛け合わせもそうです。今も一般的な人事の方と違って事業経験があるのと、経営者の観点で物事を捉えることができるのは強みだと思っています。

確かに事業経験と経営者視点のある人事は強いですよね。

今回の転職で「なんで人事をやるの?」とか「せっかくのキャリアがもったいない」と言われることもあったんですけどね。でも、直前に自分のいたデジタルコンテンツの領域で突き抜けることを目指すよりも、そこで学んだ経験を活かしつつ、違うフィールドに重ねていく方が僕の中では面白みがあって実現するスピードが早いと思ったし、結果的に人材として希少価値が出たようにも思います。

辛い時に逃げたりはしなかったと仰っていましたが、これまで仕事でつまずいたことはなかったんでしょうか?

もちろん、しんどくて全然仕事しなかった時期とかもありますよ。営業の時とか、朝に出社してそのまま「行ってきますー」って外出してカフェでずっと本読んでるみたいな(笑)。でも、3日もサボってたらリフレッシュもするし、自分でこれはダメだなと思って復活してました。個人的に、長期的に良い仕事をするために根を詰め過ぎないのは大事だと思ってます。持続可能なレベルで適度に余裕をもって全力を尽くすのが理想です。

もちろんその一方で「自分は会社に利益を出しているか?」ということはずっと意識していますね。

キャリアプランに悩まれている若い人も多いと思うのですが、開さん的には何を指針に決めていけばいいと思いますか?

既にやりたいことが明確な人は「それに向かって全力で頑張ればいいじゃん」って思うんですけど、大概の人はそうじゃないですよね。

開さんもやりたいことはなかったですか?

明確にはなかったですね。ただ、「生まれた時より死ぬときの方がいい世の中になっていてほしい」とは思っていて、自分の力で社会をより良くしたかった。でも若い頃って与えられる仕事とその思いが綺麗には繋がらなくて。自分の選択や行動に迷いがなくなってきたのは40代になってからですね。20代の時とかは、与えられたことを一生懸命やるってことしかできなかったです。

でも改めて考えると、明確にやりたいことがないなら、自分ができることを増やしとくっていうのも手だと思います。リクルートで「やりたいこと、できること、すべきこと」を「Will、Can、Must」という表現で言われ続けてきたんですけど、Willがない人はまずCanを伸ばしとけって思います。そうしておけば、いつかやりたいことが出てきた時にきっと実現できるはずなので。

「この会社の風土を本気で変えたいし、社員みんながやる気に満ち溢れた状態を作りたい」と熱く語って下さった開さん。「キャリアを歩む上で、最終的には自分が面白いと思った方を選んできた」というお話も印象的でした。お時間をいただき、ありがとうございました!

会社名 株式会社やる気スイッチグループ
代表者 代表取締役社長 高橋 直司
設立 1989年11月
所在地 〒104-0032
東京都中央区八丁堀二丁目24-2 八丁堀第一生命ビル
事業内容
  • 個別指導塾・英会話スクール・幼児教育・民間型託児保育の経営ならびに、この事業を営む会社の株式または持分を保有することにより行う、当該会社の事業活動の支援、管理および事務代行、経営指導等の業務
サイトURL https://www.yarukiswitch.jp/