普段、何気なく受け取っている会社からの給料ですが、そこからは税金や社会保険料などが天引きされています。この天引きされている税金や社会保険料は、会社を退職すると基本的に自分で変更や支払いの手続きをしなければなりません。総務や人事に所属していた人以外は意外と知らない人が多いため、転職活動を進める前には、どのような手続きが必要かを確認しておく必要があります。
退職すると手続きが必要な税金と社会保険の種類
勤めていた時には、給料から天引きされていた税金や社会保険などは、退職すると自分で手続きをする必要があります。まずは、退職時に手続きが必要な税金と社会保険の種類を知りましょう。
税金
所税金
所得税は、年初に1年間の収入を想定して、それをもとに一定の税率で毎月の給料から天引きされる前払い方式の税金です。毎年12月には、年末調整を行って実際の所得と毎月納入した税金の額を調整します。会社に勤めている時は、勤務する会社が正確な税額を計算して調整していますが、退職した場合には、基本的に自身で手続きをする必要があります。
住民税
住民税は、後払い式の税金で、前年1月~12月の1年間の所得に対する税金を、翌年の6月から翌々年5月にかけて都道府県と市区町村に納めます。後払いのため、退職して収入が無くなったとしても、前年の所得に対する住民税の支払いが必要です。
退職金の所得税
定年退職や転職などで会社から受ける退職金は税法上「退職所得」と呼ばれ所得税を支払う必要があります。一般的には、退職金の手続きは源泉徴収によって行われるため、自分で確定申告する必要はありません。この場合、「退職所得の受給に関する申告書」を退職金を受け取る前に会社に提出することで、所得税率を通常より低く計算してくれます。
社会保険
社会保険には、健康保険だけではなく厚生年金保険や介護保険、雇用保険、労災保険が含まれます。
健康保険
退職してすぐに転職する場合には、転職先の会社で社会保険の手続きをすることになりますが、退職から次の就職まで間が空く場合には、国民健康保険に加入するか、社会保険を任意で継続する必要があります。
年金
退職してすぐに転職する場合には、転職先の会社で国民年金第2号被保険者の手続きをすることになりますが、退職から次の就職まで間が空く場合には、国民年金を切り替える必要があります。
雇用保険
退職してすぐに転職しない場合には、雇用保険の失業給付を受けることができます。その際には、退職した企業から離職票と雇用保険被保険者証(会社が保管している場合)を受け取っておく必要があります。雇用保険被保険者証は転職先の会社にも提出が必要となります。
退職後に必要な税金の手続き
それでは、退職後に必要な手続きについて確認してみましょう。
所得税
所得税は前払い方式の税金のため、所得税を多く納めた場合には還付金を受け取ることができます。そのために必要な手続きは、退職した年に再就職したかどうかで異なります。退職した年内に再就職した場合には、年末調整を転職先の会社が手続きしてくれます。
退職した会社で発行してもらった「源泉徴収票」を医療費・住宅ローンなどの控除証明書などと一緒に提出しましょう。 退職した年内に再就職しなかった場合には、翌年の確定申告の時に、自身で居住地を管轄している税務署で確定申告を行います。その際に必要なものは「源泉徴収票」と「控除対象になる支出の証明書」や「印鑑」などです。
住民税
住民税は、後払い式の税金のため、再就職せず収入がない場合でも納入の手続きが必要となります。納入方法は退職した月によってかわります。1~5月に退職した場合には、前々年の所得に対する課税金額のうち、5月までの住民税の合計を退職時の最後の給与から一括で支払います。前年の所得に対する住民税は、6月1日までに再就職しているかによって異なり、再就職している場合には、転職先の会社で給与から天引きされます。
再就職していない場合には、市役所や町村役場から納付書が送られてくるので、その納付書を添えて分割払いします。6月~12月に退職した場合には、退職する月の給与からその月の分の住民税が引かれます。残り来年5月までの分は、市役所や町村役場から送付される納付書を添えて分割払いします。
退職する月の給与や退職金などから、前年の所得に対する住民税を一括で納付することも可能ですが、一度に支払う金額が大きくなってしまうので、経済状況に合わせて判断すると良いでしょう。
退職金の所得税
「退職所得の受給に関する申告書」を退職金を受け取る前に会社に提出することで、所得税率を通常より低く計算してくれます。退職前に忘れずに提出するようにしましょう。
退職後に必要な社会保険の手続き
退職後に必要となる社会保険関係の手続きは以下の通りです。忘れずに行うようにしましょう。
健康保険
健康保険は、会社で加入しているため退職と同時に脱退することになります。健康保険被保険者証(保険証)は会社に返却します。返却後は、健康保険の任意継続被保険者制度を利用する、国民健康保険に加入する、家族の扶養に入るという3つの選択肢があります。任意継続は退職日から20日以内、国民健康保険は退職日から14日以内に手続きが必要なので、いずれを選択する場合も速やかに手続きします
年金
国民年金は会社に勤めている間は第2号被保険者として年金保険料が給料から天引きされていましたが、退職をすると第1号被保険者または第3号被保険者 に種別を変更をする必要があります。
雇用保険
すぐに転職せずに、雇用保険の失業給付を受ける場合には、ハローワークに求職の手続きをしたうえで、失業保険の給付手続きをする必要があります。失業給付が支給されるには規定の条件を満たす必要がありますが、転職活動が長引きそうな場合には会社から離職票を受け取り次第手続きをするようにしましょう。
まとめ
退職後、すぐに新しい会社に就職する場合には、転職先の会社で税金や社会保険などさまざまな手続きをしてくれます。しかし、退職してから、転職するまで間が空いてしまう場合には、自分で手続きが必要です。意外と手間と時間がかかるため、転職するなら転職先を決めてから退職するようにするのがおすすめです。