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退職の際、自分で交換した顧客の名刺は持ち出して良い?

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退職する際には、さまざまなモノを返却しなければいけません。その中のひとつが名刺です。自分の名刺を返却することに違和感を抱く人は、おそらくいないでしょう。しかし、自分が顧客と交換した名刺を手放すことに納得できない人もいるでしょう。なぜ自分で交換した顧客の名刺を、持ち出してはいけないのでしょうか。詳しくみていきましょう。

交換した顧客の名刺は担当者の所有物ではない

営業職など多くの顧客と関わる仕事をしてきた人にとって、顧客の名刺は、自分が汗水垂らして業務に邁進してきたことで得た成果のひとつです。何かのときに頼れる人脈として、自分が名刺交換をした顧客と今後も繋がりを持ち続けたいと願う人は多いかもしれません。これからも顧客との関係を継続していくために、交換した名刺を、会社へ返却せずに持ち出したいと思う気持ちが、理解できない訳ではありません。

しかし、一般的に、業務において交換した顧客の名刺は、会社が所有権を有すると考えられています。ではなぜ、自分で交換した顧客の名刺の所有権が、実際に交換した個人ではなく会社に帰属すると考えられているのでしょう。名刺交換をした担当者ではなく、会社が顧客の名刺の所有権を有する理由について確認していきましょう。

顧客の名刺が会社の所有物とみなされる根拠とは

実際にあなたが名刺交換をするのは、どのような場面でしょうか。

営業職でしたら、新規で取引をしてもらうための営業活動として、初めて担当者と面談したときや、自社または相手企業の担当者が交代することに伴う引き継ぎ挨拶をするときなどに、名刺交換をします。技術職だと、同業他社が集う会議・研修会の場や複数の企業が技術を結集し実行するプロジェクトの立ち上げ時など、名刺交換をおこなう場面は挙げればきりがありません。

しかし、どの場面であっても、お互いが一個人として、個人的な関係を築いていくために名刺交換をした訳ではありません。それぞれが会社を代表する者として、これから会社同士の取引を始めるためや、円滑に業務を進めていくために名刺を交換しただけなのです。

取引先の担当者が名刺を交換してくれた相手は、個人としてのあなたではなく、取引先企業の代表としてのあなたなのです。顧客との名刺交換は、あくまでも業務の一環でしかありません。会社を代表して顧客の名刺を預かっただけなので、顧客の名刺はあなたの所有物ではなく会社の所有物になるとの考えが一般的なのです。仮にあなた自身が名刺の管理をしていたとしても、退職し業務を外れるあなたが顧客の名刺を持ち出していいとはなりません。

ですから、自分で交換した顧客の名刺であっても、会社から返却を求められれば、すぐさま返却することが、円満に退職するためのマナーといえるでしょう。

名刺を返却せずに退職後に活用したことで訴えられることも

退職してから、改めて、お世話になった取引先の担当者へお礼状を送付する予定なので、顧客の名刺を返却したくないと考える人がいると思います。また、退職後に、同業他社へ転職する場合や自分で会社を設立する場合など、在職中に入手した顧客の名刺を活用して営業活動をしたいと考えている人もいるでしょう。

このように、退職してから、顧客の名刺を利用したいと考えている人が、会社から名刺の返却を命じられた場合、返却を拒むと問題になるのでしょうか。退職後に顧客の名刺を利用したことで、裁判になった例がありますので、紹介します。

退職後に顧客の名刺を利用したケースの裁判例

 

これから、ふたつの裁判例を紹介します。ひとつは、損害賠償が認められなかった裁判例、もうひとつが、損害賠償を認めた裁判例です。

損害賠償が認められなかった裁判例

 

退職時に顧客の名刺を返却せずに、転職企業で名刺を利用した営業活動をおこなっていたことで損害を被ったとして、元社員A氏が元勤務先B社から損害賠償を求められた裁判がありました。B社は、業務にて入手した顧客の名刺は、営業秘密にあたると主張し、営業秘密となる名刺を利用したA氏を訴えたのです。

一審では、B社に勤務していたA氏が入手した顧客の名刺は、営業秘密にあたらないとの判決が確定しました。判決の理由は、利用や保管を制限する取り決めを労使間で交わしていないので、各社員が管理していることが多い名刺を、会社が営業秘密として管理することは困難だからとのことでした。

ただし、労使間で利用や保管を制限する取り決めを交わしていたり、社内規程にて定められていたりする場合は、この限りではないとされています。

損害賠償を認めた裁判例

 

C氏は、D社に在職している間に別会社E社を設立していました。そして、D社を退職してから、D社在職中に入手した顧客の名刺を活用し、E社の営業活動をしたことでD社から損害賠償を請求されました。

一審では、D社の訴えを認め、C氏に損害賠償が命じられました。D社在職中に、E社の営業活動に活用するために顧客の名刺を持ち出したことは、雇用契約上の義務違反にあたるというのが、判決の理由です。

まとめ

 

上記の裁判例で分かるように、労使間での取り決めや社内規程の有無、顧客の名刺の活用方法によって、損害賠償が認められるケースと認められないケースがあります。

ただし、結果として損害賠償が認められなかったとしても、裁判の当事者となれば、多大な時間と労力、精神的ストレスがかかってしまいます。

退職後に余計なトラブルを招かないためにも、退職の際は、顧客の名刺は返却しておきましょう。お礼状を送付したい場合など、どうしても顧客の名刺を利用したいときは、上司に事情を説明し、了承を得てから、連絡先などを書き写すようにしましょう。

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