デザイナーといえば、「グラフィックデザイナー」「インテリアデザイナー」などを思い描く方も多いのではないでしょうか。 今回紹介するのは「モーションデザイナー」です。あまり聞きなれない職業かもしれませんが、映像作品を作り上げるうえで欠かせない非常に重要な職業です。今回はモーションデザイナーの仕事内容、やりがいなどを解説します。
「モーションデザイナー」とは、グラフィックデザイナーの1種です。その中でもモーションをつけることに特化したデザイナーをモーションデザイナーと呼び、アニメーションデザイナーとも呼ばれます。
モーションとはキャラクターの「動き」という意味です。体の動きだけでなく顔の表情や、手足や指の関節などの細かな動作を一つひとつ表現し、「命を吹き込む」作業を担当します。
たとえばアニメ映画に代表される3Dグラフィックのアニメキャラクター、3Dグラフィックを使用したアクションゲームのキャラクターがまるで本物の人間のように動いているのは、モーションデザイナーのおかげです。とくにアニメーションの制作や、ゲーム開発を行ううえで重要な職種といえるでしょう。
モーションデザイナーは、CGモデルに表情や動きをつけるのが仕事です。CGモデルは本来、一切の動きがついておらず、「歩くときの手足の関節や指の動き」「服や鞄などのアイテムの動き」「目の瞬き」のようなさまざまな「動き」をひとつ1つずつ再現していきます。
モーションデザイナーの仕事は、CGモデルを「ただ想定されたとおりに動かす」だけではありません。
たとえば、「本来の動きとしてはありえない動き」でも、キャラクターの個性や物語の魅力を出すために意図的に動かしています。そのため純粋に高精度なモーションの技術だけでなく、見る人の心を動かせるような高い表現力が求められます。キャラクターを生かすも殺すもこのモーション次第だといっても過言ではありません。
モーションデザイナーは、キャラクターの命を吹き込む重要な仕事です。そんなモーションデザイナーになるためには、Mayaや3dsMAX等のデザインツールを学ぶ必要があります。具体的にはどうすればなることができるのかを見ていきましょう。
モーションデザイナーになりたいと思った方やより興味をもったという方に、具体的にどうすればよいのか3つに分けて解説します。
デザイナーになる最短ルートはやはりゲーム・デザイナー系の専門学校に入学することでしょう。
専門学校でデザインについてしっかりと学び、インターンシップなどで実務経験を積んで、その経験をアピールしたりポートフォリオ(作品集)を制作したりして、インターンシップ先に就職するというのが主な流れです。
情報系の大学に進学後、独学でデザインを学んだり、インターンシップなどで実務経験を積んだりして就職活動をしましょう。
また、有名なゲーム会社では、募集要項で「大卒以上」と定めている企業も少なくありません。「有名なゲーム会社やアニメ制作会社に入りたい!」と思っている方は、大学へ進学するほうがいいでしょう。
ややハードルは高くなってしまいますが、独学で知識を身につけてフリーランスのデザイナーとして活動していく方法もあります。
技術力は必要であるうえ、社会人としてのマナーやモーションデザイナーの実務経験が求められますが、CG制作プロダクションなどでは定期的に業務請負で求人を出している企業もあります。
別業界に就職後「やはりモーションデザイナーの道に進みたくなったが、どうしたらいいのかわからない」という人は、独学で地道に技術を身につけていく手段もあります。
モーションデザイナーという職業自体に、学歴や学力が必要というわけではありませんが、行きたい会社が決まっているという人は例年の募集要項には目をとおしておきましょう。
ここからはモーションデザイナーには、どんなやりがいや身につくスキルがあるのかを解説します。このポイントを理解しておくことで学生時代に身につけておくべきスキルが明確となるので、ぜひ参考にしてみてください。
一番のやりがいは「実際にキャラクターが動いているときの感動」です。試行錯誤の末、ありとあらゆる工夫を凝らし、膨大な時間を費やしてキャラクターに命を吹き込みます。そのキャラクターが作品に登場したときは「作ってよかった」と思えることでしょう。
クリエイターの中でも細かい作業が非常に多い職業ではありますが、その分、完成品を見たときの感動もひとしおです。
モーションデザイナーとして身につくスキルは、「モーションの技術」「表現力」の2つです。具体的に1つずつ解説します。
経験を積むことで、「より正確に」「より自然に」「よりスムーズに」「より効果的」なアニメーションを作れるようになります。
人間がただジャンプするだけでも、実際は膝やかかと、つま先なども連動して動きます。経験が無いうちは「頭では分かっていても、それをキャラクターに実装することは難しい」という状態になってしまうでしょう。
しかし実務を積んでいくうちに、モーションの技術が身につき、よりいいアニメーションを作れるようになるでしょう。
モーションデザイナーは、技術と共に物事の表現力が重要となります。
眉毛や目の動き1つで人の感情を表現する必要があるので難易度は高いです。ユーザーが認識違いを起こさないようにするためには、人の行動や感情をよく観察し、自身の感性を磨いていくことが大事です。
「この感情の動きは、どう表現したらいいだろう」「この動きをよりダイナミックに見てもらうにはどうしようか」という表現についての造詣を深めていきましょう。
モーションデザインを行うことにより、表現力が身につくというのは少し意外だったのではないでしょうか。次に、どのような人にモーションデザイナーの適性があるのかを解説します。
モーションデザイナーに向いているのは、「コツコツと作業ができる人」「学び続けられる人」「新たな技術に拒否反応がない人」です。それぞれ解説します。
モーションデザイナーの仕事は、コツコツとした作業の積み重ねです。
10秒程度の映像を数か月かけて作り上げる、気の遠くなるような作業がメインとなるので、営業マンのように「すぐに結果が出る、結果が見えやすい」仕事の方がいい!という人にとってはかなり厳しい作業でしょう。コツコツと1つずつ作業をこなしていくことに苦痛を感じない人に向いています。
少し意外に思うかもしれませんが、モーションデザイナーはコミュニケーション能力が求められます。理由として、ディレクターと打ち合わせをする際や、制作を進行するうえで認識を擦り合わせる必要があるからです。
とくにモーションを制作するには大量の時間を消費するので、「認識違いで考えていたものとは違うものを作ってしまった」というミスは、スケジュールに大きな影響を与えます。そういった最悪の事態を防ぐためにも、コミュニケーションを積極的に取れる人はスムーズな制作が可能です。
グラフィックの技術は目まぐるしく進化しています。今や3Dグラフィックは当たり前となり、本当の写真と見間違えてしまうほどきれいなデザインとなっており、動かす範囲や細かさも増えています。これから新たな技術もどんどんと誕生するでしょう。
「今までの方法が使いやすいから」という理由で、過去の手法にこだわっていては取り残されてしまいます。柔軟に新たな技術を受け入れる姿勢が欠かせせん。
モーションデザイナーは求められるスキルが高く、大変なイメージが強いかも知れません。モーションの技術を磨くだけでなく、人の感情をどのように表現すればより魅力的な作品に見えるかまでしっかりと確認する必要があります。
映像作品やゲームでの演出の勉強や、人の感情についての勉強のほかに、さまざまな人生経験を積むことも求められるでしょう。
モーションデザイナーを目指すのであれば、学生時代からどんなモーションデザイナーになりたいのか(アニメを動かしたい、ゲームを動かしたい)などをあらかじめ定めておいたほうが、スムーズに就職がしやすいです。モーションデザイナーになりたい方や興味があるという方は、ぜひ参考にしてみてください。