エンジニアと聞くと、パソコンを使ってソフトを開発するイメージがあるでしょう。エンジニアは、基本的に各分野に特化して仕事をする職業です。「○○エンジニア」というように細分化されており、多くの種類が存在します。 今回は、数あるエンジニア系職種の中でも「汎用機系エンジニア」の仕事内容、やりがいなどを解説します。
そもそも「汎用機」とは、IT業界における「汎用系コンピュータ」のことを表しており、大企業や官公庁などに導入されている、大型かつ高性能なコンピュータのことです。通称「メインフレーム」とも呼ばれています。
汎用機は、処理能力が家庭用のパソコンなどよりも大幅に性能がよく、処理の速度も段違いのため、大量のデータ処理を行うのに向いています。
内部の設計もハードウェアも、各メーカーが独自に開発したものを利用しているため、普段使っているパソコンのように直感的には使うことができず、汎用機を扱う際には特殊な知識を必要とします。
また、汎用機は普通のパソコンと比べて、「販売価格」「導入費用」「ランニングコスト」が高額で、本体を購入するだけで高いものでは1,000万円を超えます。その性質上、中小企業で導入するというのはハードルが高く、ほとんどが大手の企業で導入されています。
そんな汎用機上で動作するシステム開発を「COBOL」を始めとする開発言語を用いて行うのが、汎用機エンジニアの仕事です。通常の開発をしているエンジニアよりも深い専門知識と高い技術が求められます。
また導入できる企業が限られているので、クライアントも大手企業や官公庁が多いでしょう。大量の個人情報や、国の機関にも広く利用されているため、社会的な重要度と責任も非常に大きなポジションです。
汎用機エンジニアの仕事内容は、基本的にシステムエンジニアと同じですが、重要なポイントは、汎用系コンピュータを扱うということです。
通常の開発とは仕様が異なり、独自の技術仕様といえる汎用機上で動作するシステム開発が求められ、ハードウェアに特化した開発が主な仕事内容です。
「要求分析」とは、ITシステムに対して期待している要求内容をヒアリングして、「現在何ができていなくて困っているのか」「それを解決するためにどのような形で実装したいのか」を聞きとり、「それを実現するためにどんな技術が必要なのか」を考えることです。
顧客の要望以外にも、システムに対して掛けられる予算を基に、開発できるシステムを検討し、開発期間や費用を算出して顧客と擦り合わせていきます。
また、要件定義とは、先述した「要求分析」で決まったシステム要件を実現するために、システム要件を定義することです。もし、予算的に「要望に応えるのが難しい」という場合は、どの要件を残しどの要件を省略するか、すり合わせを行います。
ここはプログラミングの知識もさることながら、正しく過不足なくヒアリングをする必要があるため、コミュニケーション能力の高さが求められます。
顧客の求めるシステムを開発し、設計を行う工程です。「要求分析」や「要件定義」を元にして、システムにどのような機能を持たせるのか、表示方法や操作方法はどのような形で行うのかなどの仕様を決定します。
基本設計が固まったら実装する機能に対し、どんな技術で実現するのかを考え「詳細設計」をする業務です。プログラマーがプログラミングをするために必要な、細かな設計を行います。
設計を元にしたプログラミングが終わり、システムが形になった後、システムがきちんと設計通りに動作するのかテストする工程もシステムエンジニアが担当します。
テストはソフトウェアにより、自動化させるケースもあります。テストが終了したら、結果をまとめて文書化し、開発者やプロジェクトリーダーなどに報告。ここでテストを行った際に「想定した動作をしなかった」「エラーなどの不具合が起きてしまった」などの不備があれば修正し、テストをもう一度最初から行うこともあります。
また、テストの結果によっては、ソフトウェアの機能の改善点の提案も行う場合があります。あくまでクライアントの立場に立って、「使いやすいか」「求めている要件を達成できるか」機能を評価することが重要です。
では実際に、汎用機エンジニアになるには、どんな方法があるか解説します。昔は、プログラミング自体が限られた人にしかできないものでしたが、現在はさまざまな専門学校やプログラミングスクールが開校されており、プログラミング自体がかなり身近なものになっています。そのため、エンジニアを目指している人には学びやすい環境です。
情報系の専門学校に進学する方法です。就職するための専門的な知識を学びつつ、資格を取得できます。また、インターンシップで業界の知識を吸収できるので、スムーズな就職活動が可能です。
情報系の大学への進学もエンジニアになるには有効です。資格を取得したり、インターンシップ、自身でツールの開発をしてみるなどして、就職時にアピールできる力を身につけておきましょう。
成人して未経験からエンジニアを目指すのであれば、プログラミングスクールで技術を学ぶ方法もあります。特にプログラミングスクールは、運営している会社への就職が保証されている場合があり、IT業界未経験からエンジニアを目指したい方におすすめです。
次に、 汎用機エンジニアはどんなやりがいがあり、身につくスキルはどんなものがあるかを解説します。
汎用機エンジニアは、古くから存在するシステムであり、縮小化されている傾向があること、そしてエンジニアの高齢化により、人材も不足しています。
ただ、今後古いシステムが新たなシステムに移り変わっていく可能性が高いため、汎用系の言語以外にも、オープン系も理解している人材であれば、かなり重宝されることが想定されます。
汎用機エンジニアならではのやりがいや身につくスキルを紹介します。
汎用機エンジニアのやりがいは、
・専門的・難易度の高い技術に触れられる
・さまざまな業界に携われる
・年収が高い
この3つです。
1つずつ解説します。
IT業界は常に技術が進化し続けています。その中で、古くから存在する専門的かつ難易度の高い技術に触れることができるというのは、自身のスキルアップにつながり、キャリアアップしやすいため、やりがいとなり得るでしょう。
汎用機を扱うのは大手企業ばかりです。つまり大手の金融業界など、IT以外の業界も導入しているため、さまざまな業界に携わることができます。
汎用機エンジニアは20代でも平均年収が500万円と言われています。システムエンジニアは20代の平均年収は300万〜400万円代と言われており、待遇に明確な差があります。
仕事のやりがいも大事ですが、待遇も大事です。特に年収が良いというのは、結婚やマイホームの購入、子供の学費などなど、将来の支出を見据えて働きたいという方にとって、重要なポイントでしょう。
次に、汎用機エンジニアとして身につくスキルについて解説します。
汎用機エンジニアは、通常の開発言語でよく使用される「C+」「Java」などではなく、「COBOL」などを利用するため、システムエンジニアよりも幅広く、深い知識を身につけることが必要になります。
その性質上、普通のシステムエンジニアよりも、言語の知識が深くなり、技術力も高くなるでしょう。
開発という上流の工程を担当するということは、IT業界でも技術力を持った限られた人のみです。つまり、自ずと汎用機エンジニアはIT業界の中でも、価値ある人材といえます。
価値が高まることは転職やキャリアアップにも役立つため、技術的なスキルというよりも、高い人材価値というポイントで「スキル」といえるのではないでしょうか。
次に、どのような人が汎用機エンジニアに向いているのかを解説します。
エンジニアに適正があるのは以下の3点を備えている人です。
・知識の吸収に貪欲な人
・コミュニケーション能力が高い人
・淡々と同じ作業を続けられる人
1つずつ解説します。
IT業界は特に進化が著しい業界であり、数年たてば現在の知識だけでは置いてけぼりになってしまうほど、目まぐるしくトレンドの技術が変わります。その時代の速さに負けないように、知識を意識的に吸収し学ぶことができる人が向いているといえます。
「え?基本的にパソコンに向かってるだけでしょ?」「コミュニケーション能力無くてもできる仕事じゃない?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、要件を細かく定義するためには、コミュニケーション能力が必須です。クライアントの要望を正しく汲み取るのもプログラマーの仕事。「思ってたのと違う」という結果にならないよう、過不足なくヒアリングできる能力を鍛えておきましょう。
仕事内容はクライアントにヒアリングして、要件を定義し、常にパソコンに向かってコードを書き、正しく動作しているかを検証するという流れを繰り返す仕事です。頭脳を使いますが、作業内容自体は常に同じです。
その状態でも集中を切らさず、高品質な仕事を淡々とこなすことができる人が向いているといえるでしょう。
汎用機エンジニアは上流工程を担当するため、求められるスキルが高く、汎用機エンジニアになること、そして汎用機エンジニアとして仕事を続けていくことは大変だというイメージが強いかも知れません。また、コミュニケーションの能力も求められるなどハードルは高いでしょう。
しかし、その分年収は通常のシステムエンジニアよりも比較的高額といわれており、IT業界で仕事を長く続けるのであれば、目指す価値は十分にあるでしょう。汎用機エンジニアになりたい方や興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。