
ピクスタ株式会社
代表取締役社長 古俣大介さん & 取締役兼CSO プラットフォーム本部部長 遠藤健治さん
ピクスタ株式会社、といえば、クリエイティブ業界に身を置く方ならよくご存知のはず。
そう、ストックフォトサービス「PIXTA」を運営している会社さんです。
インターネット黎明期ともいえる、2005年に創業。
Web業界の急速な発展に伴い、世の中にはWebコンテンツは溢れんばかりに急増し、「PIXTA」のニーズは拡大、事業規模は瞬く間に成長。
2015年9月には東証マザーズ上場を果たしました。
2013年11月のシンガポール拠点を皮切りに、2015年に台湾、2016年にタイ、2017年に韓国と次々に拠点を構え、デジタル素材市場が急拡大しつつあるアジア市場に次なる狙いを定めてらっしゃるところです。
そんな「PIXTA」は、一体どんな風に誕生したのか?
次はどんなサービスを展開するおつもりなのか?
「ピクスタ」社内は、どんな雰囲気なのか?
気になったので、取材決行!
創業者であり代表取締役社長の古俣さん、そして取締役の遠藤さんに、お時間をいただきました。
埋もれている「才能」との出会いが、物語の始まり
ピクスタ社の「原点」。それは、2004年に古俣さんの目に飛び込んできた、こんな風景でした。
高性能デジタルカメラが、すごい勢いで普及し始めていた頃です。
古俣
ある日何気なく、とある写真投稿掲示板を見たんです。その掲示板ではアマチュアフォトグラファーさんたちの作品が数多く投稿されていたのですが…、私はその時、本当に驚いたんです。そのクオリティの高さに。
風景や動物、料理や家族…ジャンルは様々ながら、情熱が注がれた写真の数々は、どれも胸を打つものばかりだったそう。
古俣
こうして個々の作品を世界中に発信できるインターネットの大きな可能性を感じるとともに、「世の中には、すごい数の才能が埋もれている」ことを実感しました。
とはいえ、当時はようやくインターネットがブロードバンドになったばかり、個人サイトを作ることも簡単ではないという時代でした。SNSなんて言葉もまだ生まれていなかった頃です。
古俣
つまり、インターネット上には、それら「埋もれている才能が評価される場所」は存在していなかったんです。ならば私が、そういった場所を創り出してみよう、そう思ったんですね。
古俣さん自身、小さな頃からクリエイティブなことが大好きだったそう。自分でイラストを描いたり、本やマンガを手当たり次第読み漁ったり。「もしかしたら、それが原体験だったのかも」と古俣さん。
古俣
プロになろう、仕事にしようと考えているわけじゃなかったんですが、とにかく夢中でした。ですからこうして写真撮影に情熱を注ぐ人たちの気持ちが、とてもよくわかりました。彼らに、その才能やセンスを発揮できる機会を提供したい、心からそう思ったんです。
写真素材は、あくまでも、「One of them」
こうして2006年に誕生したのが「クリエイターと、彼らが創るクリエイティブを活かす購入者とを結ぶマーケットプレイス「PIXTA」だったというわけです。
古俣
当初から「写真素材は、One of them」と考えていました。写真は、世の中に埋もれている膨大な才能表現のうち、ほんの一つのピースに過ぎないわけですから。
インターネットテクノロジーの力を用いて、誰もが才能やセンスを発揮できる「フラットな世界」を作り上げたい。そして、その実現に向けたプロジェクトテーマ”第一弾”が、写真素材だったわけです。
古俣
当時としては珍しいビジネスモデルでしたから、新聞や雑誌などのメディアで幾度も取り上げていただきました。その効果もあって、リリース後間もなく数百人のクリエイターさんが登録してくださいました。彼らの熱量は私の期待を大きく上回るもので、とても嬉しかったですね。
さらに「PIXTA」の勢いを後押ししたのは、なんと、2008年に発生した「リーマン・ショック」だったとか。
古俣
リーマン・ショックが起きたことで、”副業ブーム”が起きたんです。その時は、実に多くのメディアが副業特集を組み、当社サービスを取り上げてくださいました。あの影響で、相当クリエイター数が増えたんじゃないかな。
なるほど、リーマン・ショックという事象は、世の中に暗雲をもたらしたと同時に、世界のあちこちで「個としての自立」を促しましたもんね。
「PIXTA」は、こうして一気にクリエイティブ業界の中で知名度を上げていきます。
小説?アイドル?え…っと、コント?!
それにしても、「写真は、One of them」という言葉が、とても印象的です。イラストや動画の取り扱いをスタートしたのも、そういう背景があったんですね。
古俣
ええ、そうです。個人の才能が創り上げるものであれば…できることなら全て取り扱いたいくらいですね。
遠藤
市場ニーズを見つつ、総合的に判断して優先順位を決めていく必要はありますが、古俣が言うように、可能性は無限にあると考えています。その中でも、現在は、先日出資した協力企業とともに「音源」の取り扱いを進めています。
なるほど…!Webでの表現技術が高度化する今、音源のニーズ、ものすごく高そうです。それこそ既に「PIXTA」が取り扱っている動画や写真、イラストとも親和性が高い。
古俣
可能性という点で言えば、まだまだありますよ。例えば…
そう古俣さんと遠藤さんが話し始めると、びっくりするような世界が、そこには広がっていました。
「たとえば小説だとか手芸だとか…」
「ナレーションなどの声もいいね」
「司会や演奏といった表現活動も十分にニーズがある」
「ならばコント、なんてのもあり得ますね」
「アイドルもね」
へえええええええええ!面白い!「One of them」にしても「THEM」の幅、広っ!
古俣
ええ、できる限り多くのクリエイティブな素材や表現活動を取り扱っていきたいですね。そうすれば、きっと今よりもっと多くの方々が才能を活かして、やりがい、生きがい、挑戦心を持てるような世の中になると思うんです。
ちなみに2016年2月にスタートした出張撮影マッチングサービス「fotowa」。
これも、ピクスタさんが新たに作り上げた「才能を活かす場」の一つです。
写真素材ではなく、「フォトグラファー」と、一般個人とをダイレクトにつなげるサービス。成人式やお宮参り、お誕生会などに、気軽にフォトグラファーを呼ぶことができるわけです。
ユーザー目線に立ったサービス設計・プランや料金が好評で、こちらもあちこちのメディアで取り上げられています。
「脱サラ」した方も。ピクスタメンバーにとっての、最大の幸せ
遠藤
ピクスタのメンバーたちは、職種や部署問わず、クリエイターさんからいただく声を、本当に心から喜んでいます。もちろん、ユーザーの皆さんからの声も…
例えば「fotowa」の利用者からは、非日常的な体験ができたと大喜びの声が次々と届くそう。
「PIXTA」ユーザーからも、ビジュアルの魅せ方の幅が広がった、素晴らしい資料でプレゼンができた、などなど…
遠藤
「PIXTA」に作品を提供してくださっているクリエイターさんの中には「脱サラ」した方もいらっしゃるんですよ。要するに、「PIXTA」だけで生計を立てられるようになったということです。
そんな方がいらっしゃるんですね!すごい。
そんな脱サラされたクリエイターさんを簡単にご紹介しちゃいます。
■ PIXTA初期会員!xiangtaoさん
xiangtaoさんはPIXTAが生まれてから1年後、2007年5月登録の初期会員さんです。登録なさった当初は会社員だったため、撮影活動は土日のみ。それも風景写真を主としていたので、天候に左右され、なかなか作品づくりができないことが悩みでした。そこでxiangtaoさんは、大胆にも「人物写真」へと方向転換!会社員としてのセンスを活かして「需要があるのは、どんな写真テーマだろう」と探りながら撮影を続けた結果、土日の活動だけで本業と遜色ない収入を得るように!2014年秋、ついに会社を退職。現在はPIXTA一本で活動している、トップクリエイターのひとりです。

PIXTAでのxiangtaoさんの作品
■「好きなことを仕事に」酢谷智昭さん
趣味で始めたカメラを通じて、現在の奥様と出会ったという酢谷さん。ふたりで写真作品をつくる中でPIXTAの存在を知り、2015年に登録されました。販売数は毎月、順調に伸びていったそうです。そして「好きなことを仕事にしよう、ふたりの時間を大事にしよう」と決意し、2015年秋には勤めていた会社を退職。2016年2月にスタートした出張撮影マッチングサービス「fotowa」にも初期から関わってらっしゃいます。いまやfotowaのトップフォトグラファーのひとり、引っ張りだこの酢谷さん。人生の転機に「PIXTA」があったなんて、素敵ですね。

PIXTAでの酢谷さんの作品

fotowaでの酢谷さんの作品
こうした「人生の変化」は、もちろん彼らの才能があってこそ。でも、そんな彼らをエンカレッジし、才能を伸ばすための様々なサポートをしてきた、ピクスタメンバーの皆さんの努力との融合があったからこそ、こうして成果として実を結んだのです。
遠藤
エンジニアやデザイナーたちは、各クリエイターの才能、つまり作品の数々が埋もれてしまわないよう、ユーザーエクスペリエンスを考え抜く日々。一方、クリエイティブアドバイザーたちは、彼らに世の写真素材ニーズや売上を伸ばすための方法などを丁寧にレクチャーしたり、セミナーを開催したりしながら、彼らの作品市場価値を上げています。皆、役割は違えど、同じ方向を向いているんです。
誰もが才能やセンスを発揮できる「フラットな世界」を作り上げたい。その信念に共感したピクスタメンバーさんたちって、なんだか人の「いいところ」を見つけるのがすごく得意そうですね。
聞けば、作曲家、カメラマン、元雑誌編集者といったクリエイティブな人たちもたくさんいるんだとか。海外出身のメンバーもちらほら。いろんなバックグラウンドを持つメンバーが揃っているからこそ、なんだかとてもいい化学反応が生まれそうです。
ピクスタ社内でも「埋もれている才能の発掘」実施中
ちなみに「埋もれている才能を引き出す」という考え方は、ピクスタ社内でも同じですか?
遠藤
もちろんです。チャレンジの機会は常に周囲に転がっていますし、能力を引き出して、成果を上げられるような風土・制度作りに力を注いでいます。
なんと学生インターンに「新規サービスの立ち上げ」を任せる、なんてこともやっちゃうそう。
古俣
ものっすごく苦労していましたし、最初はパニクってダメダメでしたよ(笑)。でも、彼にはやり遂げられるパワーがあると思っていました。別に「エリートだから任せた」とか、そんなんじゃありません。
遠藤
新サービス・新事業立ち上げ、というとなんだかハードル高いですけど、各々が携わっているプロジェクトレベルでは、もう毎日のように、各自のアイデアや企画が実現されています。
確かに。貴社のHPの社員さんインタビューを読んでいたら、ほんと、そんな感じがしました!自発的に意見を言う人が周りにたくさんいると、刺激を受けて、「自分もできるかも」って思えそう。
古俣
そうですね。入社してしばらくは少々大人しくても、徐々にピクスタの風土に感化されて、恥や失敗を恐れないようになるみたいです。この前も、人事部2年目の若手が新しい採用フローを企画して、大成功しました。
このオフィス内で、きっとみなさん、そうした成功体験を積みながら「知らなかった自分の可能性」に気づくんでしょうね。
古俣
ええ、やっぱり我々自身が、常に潜在的な才能や可能性を引き出しあう努力をしていなきゃいけませんからね。これからピクスタはさらに拡大しますし、新たなサービスも生まれます。埋もれた才能を持つ方々に新たな機会を提供するため、そのスピードをさらに速めなきゃいけません。そのために、全員がいつでも準備万端でいられるよう、これからも社内を盛り上げていきたいですね。
「誰もが自分では気づいていない、隠れた才能を持っているはず」。そのことに気づき、才能の芽を見出して開花させるよろこびを知るチームピクスタ。
そんなピクスタの皆さんがこれから生み出す数々のサービスを通じて「隠れていた自分の才能」に驚き、輝く人々がどんどん増えていくんでしょうね。世の中が、とても明るいものになりそうです。
「PIXTA」というサービス概要だけじゃ決してわからない、ピクスタさんの想い、すごくよく伝わってきました。
今日はどうもありがとうございました!