シリコンバレー起業レポート。日本人エンジニアの1年間の挑戦の記録

    
2013/10/30
    

top1-3 「シリコンバレーと、日本のスタートアップ環境は何が違うのか?」
「日本の大企業と、アメリカのスタートアップの戦い方は何が違うのか?」


「Exitのエコシステムがある」というのはよく言われる事ですが、他にも「スタートアップのテンプレートがある」など多くの相違点があります。

今回の記事では、DeployGateというAndroidアプリ開発者向けテストアプリ配信サービスの開発者、井上恭輔さんが、2011年から1年間、実際にシリコンバレーでスタートアップの立ち上げに携わり、現地の文化を体感してきた事をレポート形式でご紹介します。

■目次
1.シリコンバレーでの体験
2.良質なスタートアップが生まれる3つの理由
3.fluxflexの紆余曲折と3つの学び

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【今回の資料について】ご紹介する内容は、2012年4月にmixi社内でシリコンバレーのスタートアップの実情を紹介するために作られた、報告会用の資料を元としています。内容として少し前のものですが、今でも日本では参考になる部分も多いため、当時のレポートスライドと井上さんへの取材内容を元に記事としてご紹介します。

1.シリコンバレーでの体験

井上さんがシリコンバレーで1年間やったこと

最初に井上さんがシリコンバレーでやっていた事を説明します。2011年4月?2012年3月の間、fluxflexで初心者向けのクラウドホスティングサービスの立ち上げに携わっていました。井上さんとfluxflexのCEOは、未踏プロジェクトつながりで友達だったため誘って貰っていたようです。後日談ですが、立ち上げ後はユーザ数も数千人以上になり、米国TechCrunchにも掲載されたりするくらいのサービスまで大きくなりました。

シリコンバレーに一軒家を借りて仕事場に

現地では、他の仲間とともに一軒家を借りて、住居兼オフィスとしてそこを仕事場にしていました。

まさに、ソーシャルネットワークの映画に出てくるFacebook創業直後のザッカーバーグ達のようなイメージですね。

昔はシリコンバレーと言えばサンノゼと言われていましたが、GoogleやAppleの時代を経て多くのスタートアップが登場するようになり、ホットな場所が徐々に北へ移っていきました。Twitterがいるサンフランシスコを中心としたエリアが活発になって来ています。井上さんはサンノゼ・サンフランシスコ・ベルモントの3箇所で暮らしていました。

シリコンバレー発のサービスに根付く2つの国民性

シリコンバレーで過ごしていた中で、『1. UX設計のうまさ』と『2. 呼吸をするようにインターネットを使っている』という2つの国民性に気付きました。

特に呼吸をするようにネットを使うという点は、日本と凄く差があります。

Webが当たり前の中で育った人達は、バーチャルな世界で見ているのではありません。そういう中で育ったからこそ考えつくであろうアイデアが、シリコンバレーのスタートアップに受け継がれています。

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例えば、地域に根ざしたお願いごとも出来るクラウドソーシング『TaskRabbit』、空きスペースの貸し借りサービス『AirBnB』なども、ネットが生活に根付いている国民性だからこそ、生まれたサービスだと思います。

他にも自治体の手続きがネットで出来るなど、日本だと考えられないくらい、インターネットが生活の隅々まで行き渡っています。

2.良質なスタートアップが生まれる3つの理由

シリコンバレーではなぜ良質なスタートアップが生まれる??

33 シリコンバレーには1年間いて、日本と比べて、やはり良質なスタートアップが生まれる環境が整っているなと感じました。それは以下のような理由です。

1.挑戦の絶対量が多い
2.スタートアップのテンプレートがある
3.Exitのエコシステムが出来ている

1.挑戦の絶対量が多い

なんとなくシリコンバレーのほうが、スタートアップが多いという印象は持っていると思います。ですが実際に100倍以上もあるとは知らない方も多いのではないでしょうか。

優秀な学生ほどベンチャーに行くか、起業するとも言われていますし、失敗しても再チャレンジしやすい環境なのですね。

2.スタートアップのテンプレートがある

スタートアップのテンプレートがいくつも存在することも理由の1つです。

成功している企業のビジネスモデルが、Twitterモデル、GitHubモデルなどと呼ばれて定型化されています。これは書籍としてまとまっている訳ではないですが、多くのスタートアップが知っているところです。

それはピッチにも影響しています。シリコンバレーでは、ピッチをする時も「業務用器具のAmazon」「Facebook for エンタープライズ」といった説明の仕方をします。これは成功モデルの共通認識があるからです。

3.Exitのエコシステムが出来ている

スモールビジネスでもIPOでもない第3の出口として企業買収が確立されています。

これはエコシステムになっていて、大企業は自社で研究開発したり、新しいチャレンジをするよりも、スタートアップを買収したほうが費用対効果が高いため、積極的に買収を進めます。

買収によるExitを狙うシリコンバレーのスタートアップは、アメリカにおける大企業のビジネス面におけるR&D部門という位置づけのようなものになっているのです。

例えばSiriをAppleが買収してiPhoneに実装しましたし、InstagramをFacebookが買収したりしましたね。

シリコンバレーでは、Facebookのサービスに携わりたい人がFacebookに入社するのではなく、「新しく会社を作って、そこで新しいサービスを作ってFacebookに売る」という思考回路になっている人もけっこういます。

そういう思考回路があるため、起業時点でちゃんとExit先の会社も意識しているのです。




ここで紹介した3つの理由のうち「1.挑戦の絶対量が多い」を助長しているのが、「会社はプロジェクト」という考えや、「起業の簡単さ」です。

会社はプロジェクト

シリコンバレーは、人材が非常に流動的です。入社したら会社にずっと添い遂げる訳ではなく、Exitまでコミットする感じです。

例えば、日本であれば「一生共にしましょう」というスタンスで共同創業者を見つけて起業するケースが多いと思います。ですが、シリコンバレーであれば、「2年間一緒にやりましょう。2年で結果が出なければ辞めるので2年分の時間を下さい」という期限付きのオファーのような感じです。

多くの会社がこういう考えであれば、失敗しても次が見つかりやすかったり、チャレンジの回転率が早くなったりするため、挑戦の絶対量が増えるのは当然ですね。

起業の簡単さ

あちらでは会社登記が非常に簡単なため、会社は簡単に作りますし、簡単に潰します。

ECサイトで物を購入するより簡単です。登記用のWebフォームがあり、そこに必要事項を入力すれば完了です。数分で出来てしまいます。

さらに、登記の際に必要な、現地の住所も借りることができるので、実際にオフィスを準備する必要はありません。

ここまでは、シリコンバレーでの働き方や、現地で気づいた起業文化の違いを紹介してきました。最後に、井上さんがコミットしていたfluxflexの体験と、その中での学びを紹介したいと思います。

3.fluxflexの紆余曲折と3つの学び

結論からいうと、fluxflexは一度ピボットをしました。そして現在では、カード決済ソリューション「WebPay」や、気軽にエンジニアがサーバーを立ち上げられる「Rackhub」などのサービスを提供して、日本でも話題になっています。

ただ一時期、初心者向けのクラウドホスティングサービスをメインで提供していた時代にレベニューが立たない時期がありました。簡単にその時の個人的な反省や、やって良かった事をまとめます。

(1)イテレーションが長くなり過ぎないように

最初はユーザーとの対話を行わず開発を長期化させていたように思います。初心者向けのホスティングサービスを作っていたにも関わらず、自分たちは初心者ではなかったので、全部は初心者の気持ちを理解できていませんでした。

まずは小さくリリースしてユーザーの声を聞きに行く。スタートアップはこれをやるべきだと実感しました。当時は、リーンスタートアップも日本で普及していな時代でしたが、リーンスタートアップでもこの事は紹介されていますね。


当時、スタンフォードの授業を取っていたのですが、そこの起業プログラムのメンターも、「良いプロダクトの作り方なんて存在しなくて、リリースしてユーザーから学び続けるしかない」と言っていたので、改めてとても大事な考えだと感じました。

(2)価値の検証に忠実になる

MVPという言葉をご存知の方も多いと思いますが、スタートアップの最初の頃は、そのサービスを始めるに至った「価値命題」の検証をすべきです。

そしてその価値命題の検証のために必要な、最小のプロダクトを提供しなければいけません。

これは単に機能を削ったものではなく、「課金があるサービスなのであれば、課金も含めて提供したい事」が揃っているプロダクトを指します。

井上さんは、シリコンバレーの経験を通じてその必要性を強く感じ、いま現在やっているDeployGateというサービスでの立ち上げの時にも、価値命題を検証するための設計は注意しました。

「有料でもDeployGateを使ってくれる人がいるか?」を検証したかったため、最初は無料版は出さずに有料版だけ出し、それでお客さんが付いてくれるかを見たとの事です。

(3)コホート解析で日別のユーザーの継続率等を見る


これは、「ユーザは成長するもの」という前提に立って、サービス状態を常に横断的に判断するための解析手法です。

AARRRモデルと言われ、5つのユーザ属性を定義し、ユーザーの登録日を基点としてその割合を求めていきます。


上記が実際の分析結果のサンプルです。

最後に

井上さんがシリコンバレーで働く中で、良質なスタートアップでは以下の様な共通事項があると感じたとのことでした。

  • 何よりシンプル。1分で説明できる。
  • ユーザを集めるだけじゃ価値がない。レベニューが立ってる、少なくともリテンションが凄い。
  • ローカル要素を上手く取り入れているものが多い。
  • ラーメン・プロフィッタビリティが重要。
  • サステナブルなサービスであるかどうか。
このようなシリコンバレーでの起業文化のようなものは、まだまだ日本には入ってきていないと思います。今後もシリコンバレーの情報などもお届けできたらと思います。

レポートの全スライドはこちら





(取材協力:井上恭輔さん、執筆/編集:井出)

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